飲食店を起業する際にはどれぐらいのお金がかかるのでしょうか?
本記事では、飲食店起業の際にかかるお金に関して、最低限かかるお金の項目や知っておきたいお金の知識、資金調達の種類や助成金・補助金の種類をご紹介します。
飲食店を起業する際のお金の注意点もしっかりとチェックして、お金に関する知識をしっかりと深めましょう。
飲食店を起業(開業)する際に最低限かかるお金の項目
まずは、飲食店を起業する際に最低限かかるお金の項目を見ていきましょう。
飲食店を起業するには、どんなお店にするのかといった事業計画が必要になりますが、ここではお金の項目にスポットを当てて説明していきます。
お金に関しては大きく分けて4つの項目に分類することができます。
- 場所 (貸店舗)
- 設備機材費(キッチン設備)
- 什器備品(食器や内装家具など)
- 準備諸費用 (材料など)
もちろん、この他にも項目を増やすことはできますが、できるだけ項目を少なくしてかかる費用を減らすことも可能です。
飲食店を起業(開業)する際にお金はいくらかかる?
では、飲食店を起業する際、実際にどれぐらいのお金がかかるのでしょうか?
前章で紹介した4つの項目に具体的な金額を入れて見ていきましょう。
賃料 (貸店舗)
賃料は、大きさや立地によって大きく異なります。
毎月の賃料が15万〜20万円の物件を契約する場合にかかる費用の目安は下記の通りです。
- 敷金や保証料など:150万~200万円
- 礼金や不動産仲介手数料:30万〜40万円
設備機材費(キッチン設備)
設備機材費はキッチンなどの設備を整える際にかかる費用です。
厨房機器を新品で購入する場合は、50万~80万円がかかります。
什器備品(内装家具・食器)
什器備品とは内装家具や食器にかかる費用です。
内装費用は坪単価で50万~80万円かかります。
10坪の店舗であれば800万円程度の内装費用がかかる計算です。
準備諸費用 (材料・運転費)
材料や運転費用などの準備諸費用には200万円程度かかります。
ここまでの費用を全て合計すると1280万円となります。
この金額は立地などによっても異なってくるので、飲食店を開業する際にかかる費用の目安は1000万〜1300万円程度と考えておきましょう。
飲食店を起業(開業)する際に知っておきたいお金の知識
さて、ここまでは飲食店を起業する際にかかるお金の項目と実際にかかる費用の目安を紹介してきました。
ここからは、飲食店を起業する際に知っておきたいお金の知識を見ていきましょう。
起業に必要な資金を全て自己資金で用意できない場合には、お金を借りるという選択肢もあります。
- 融資
- 資金調達
- 助成金
- 補助金
融資
融資とは、金融機関からお金を借り入れることをいいます。
しかし、開業したばかりの個人事業主や会社の場合は銀行などの金融機関から融資を受けるのは難しいのが実情です。
その中でも比較的利用しやすいのが「創業融資制度」です。
融資を受けるためには「事業計画書」と「自己資金」が必要になります。
事業計画書
事業計画書とは、開業するお店に関する全ての計画を示した書類です。
どんなお店で、どのように営業して、純利益はどれぐらいになる予定なのかといった内容が細かく記載されています。
自己資金
事業計画書と併せて、自己資金も用意しておく必要があります。
自己資金の額を提示することが信用となり、融資を受けることができるのです。
自己資金がゼロの場合には、融資を受けることはできないでしょう。
自己資金の金額に応じて融資額も変わってくるので、最低でも100万円は用意しておくのが賢明です。
資金調達
ここで紹介する資金調達は、融資制度や補助金などの資金調達ではなく、家族や親族からお金を貸してもらうという方法です。
家族や親族からお金を貸してもらうという方法以外にも、友人や出資者からお金を貸してもらうという方法もあります。
金融機関からの融資を検討している場合でも、まずは家族や親族から資金調達できるか確認してみるのがおすすめです。
こういった資金調達により自己資金が少しでも増えれば、金融機関から融資を受ける際にも有利になります。
また、金融機関からの借入も減らせるので、運転資金にかかる圧迫も減らすことができるのです。
助成金
助成金には様々な種類がありますが、雇用の創出を支援するキャリアアップ助成金などがあります。
ホームページなどで情報収集することで最新情報を得ることができます。
自分の起業に利用できる助成金の情報をいち早く得ることができれば、今後の運転資金などにも有利に活用できるでしょう。
助成金は雇用を安定させることが目的となっている場合が多いので、条件さえ満たしていれば誰でも助成を受けることが可能です。
開業する時点では利用できないものもありますが、補助的に活用することができる資金調達の1つとして覚えておくと良いでしょう。
補助金
開業する場所によっても異なりますが、補助金制度には様々な種類があります。
飲食業が対象の補助金制度をしっかりとリサーチすることが大切です。
必要な書類を用意することで開業前に補助してもらえる補助金制度もあります。
補助金は内容がわかりにくいものもありますが、徹底的にリサーチして開業や今後の運営に積極的に活用していきましょう。
飲食店を起業(開業)する際に知っておきたい資金調達の種類
ここからは、飲食店を起業する際に知っておきたい資金調達の種類について説明していきます。
資金調達の方法には、下記4つの種類があることを紹介しました。
- 身近な人からの借入・援助・投資
- 融資
- 助成金
- 補助金
まず、条件として事業計画書があることを前提に説明していきます。
事業計画書は、家族や親族などに起業について説明したりプレゼンテーションする際にも役に立ちます。
また、金融機関で融資を受ける際にも必須となるので、説得力のある事業計画書を事前に準備しておきましょう。
身近な人からの借入・援助・投資
- 【平均日数】
具体的な日数はありません。
事業計画書を使って同意をもらい、期日を決めるので、場合によっては一番最短の資金調達法になる可能性もあります。 - 【調達額】
話し合い次第なので、決まった金額はありません。 - 【平均金利】
話し合い次第では、金利無しという可能性もあります。 - 【特徴】
ルールがないだけに不確定ながら、一番リスクが少ない資金調達法といえます。 - 【条件などの記載】
返済期限や担保なども基本的にはないと考えて良いでしょう。
融資
- 【平均日数】
1ヶ月半~2ヶ月は見たほうが良いでしょう。 - 【調達額】
自己資金によって異なります。
自己資金が300万円あれば、運転資金を含めて3000万円程度の融資を受けられる可能性が高いでしょう。 - 【平均金利】
いろいろなケースがあります。
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の場合は、いろいろな特記事項がありますが、金利の面では非常にメリットがあります。
事業の妥当性等を含め審査の結果年利が決まります。※日本政策金融公庫の年利
他にも、中小企業経営力強化資金という選択肢もあります。 - 【特徴】
審査が非常に早いというのが大きな特徴です。
据え置き期間なども含め相談できる部分が大きいのも魅力といえます。 - 【条件などの記載】
新創業融資制度を利用する場合、自己資金と事業経験などが必要になります。
助成金
- 【平均日数】
申請から交付までは最短で5~6ヶ月、最長で1年~1年半かかります。
早めに申請することで交付も早くなります。 - 【調達額】
助成金の内容により異なります。
雇用に関する内容の制度が多いので、合致するものによって金額内容の確認は必要です。
※参考:トライアル雇用助成金 - 【平均金利】
返済不要で、金利もありません。 - 【特徴】
厚生労働省が実施している雇用創出を目的とした助成制度なので、条件を満たすことができれば非常に便利に活用することができます。 - 【条件などの記載】
必要書類を提出する必要があります。
また、交付後は定期的な立会い監査等もあります。
補助金
- 【平均日数】
申請から交付まで最短で5~6ヶ月、最長で1年~1年半かかります。
早めの申込みを行うことで、交付も早くなります。 - 【調達額】
案件によっては、最大450万円まで交付される補助金もあります。 - 【平均金利】
返済不要で金利もありません。 - 【特徴】
集客向上や生産性向上に貢献できる内容の補助金が多くあります。 - 【条件などの記載】
必要書類を提出する必要があります。
また、交付後の定期的な立会い監査等もあります。
助成金・補助金の種類
ここからは、助成金や補助金の種類を見ていきましょう。
数多くの助成金や補助金がありますが、飲食店を起業する際に活用できる制度をピックアップしてご紹介します。
人材関連
人材関連の助成金や補助金として下記の4つをご紹介します。
- トライアル雇用奨励金
- 特定求職者雇用開発助成金
- 人材確保等支援助成金
- キャリアアップ助成金
トライアル雇用奨励金(厚生労働省)
- 【条件】
中途採用者を雇用し、その中でも45歳以上であればより受給額が上がる
期間の定めのない労働者として雇い入れる条件等がある - 【金額】
50万~70万円
条件を満たしていれば受給できる - 【特徴】
失業者の雇い入れによる雇用創出という目的が根幹にある制度 - 【参考サイト】
厚生労働省|中途採用等支援助成金
特定求職者雇用開発助成金 (厚生労働省)
- 【条件】
高齢者や障害者等の就職困難者をハローワークからのアプローチで継続雇用する事業主に助成される内容
トライアル雇用よりは飲食業での雇い入れは難しいものの、検討の余地はある - 【金額】
30万円〜240万円 - 【特徴】
高齢者及び障害者の雇い入れによる雇用創出という目的が根幹にある制度 - 【参考サイト】
厚生労働省|特定求職者雇用開発助成金
人材確保等支援助成金 雇用管理制度助成コース
- 【条件】
雇用管理の改善を行うことにより離職率の低下を目的とする助成金
具体的な内容は細部に及ぶものの、活用できない内容ではない - 【金額】
57万~72万円 - 【特徴】
飲食業界の弱い分野だった人材確保などで雇用管理ができ、生産性が上がれば離職率の減少を実現できる内容
制度的な部分に助成が適用になるため要検討の制度 - 【参考サイト】
厚生労働省|人材確保等支援助成金
キャリアアップ助成金
- 【条件】
非正規雇用者に対して、7つのコースが設けられている
雇用側としても非正規雇用者へのモチベーションアップにつながる提案ができる内容
それぞれのコースをよく理解し有効に活用できるような条件になっている - 【金額】
コースや条件により異なる - 【特徴】
7つのコースを上手に雇用側のモチベーションアップに活用できる細分化された助成金 - 【参考サイト】
キャリアアップ助成金のご案内(PDF)
作業効率化・集客経営サポート
作業効率化や集客経営サポートに活用できる助成金・補助金として下記4つをご紹介します。
- IT導入補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 受動喫煙防止対策助成金
IT導入補助金
出典:IT導入補助金
- 【条件】
飲食店の場合は、POSレジなどの導入による作業の効率化と経営状況の把握等に寄与するシステム導入費が提示できれば条件に合致する(規模による)
※現状は製造業界なども対象に入っています。今後はAIを用いた設備導入などIOTスマートファクトリー化などが進み、飲食業界でも導入できるものが出てくるので情報収集することをおすすめします。 - 【金額】
最大450万円 - 【特徴】
今後はAI化がもっと進むため、ソフトウェアのアップデートなども含めて活用できる制度 - 【参考サイト】
IT導入補助金
小規模事業者持続化補助金
出典:小規模事業者持続化補助金
- 【条件】
販路開拓及び生産性向上の取り組みを行うっていること
新型コロナウイルスの影響などで、影響を受ける部分も加点される - 【金額】
上限100万円 - 【特徴】
採択審査の加点部分は現在の経営を維持するための内容となっているため、非常に通りやすい - 【参考サイト】
補助金ニュース
受動喫煙防止対策助成金
出典:受動喫煙防止対策助成金
- 【条件】
喫煙者の分煙処置のため条件を満たしていること - 【金額】
上限100万円 - 【特徴】
飲食店に対する助成率が3分の2引き上げられている - 【参考サイト】
受動喫煙対策補助金(PDF)
飲食店を起業(開業)する際のお金の注意点
ここからは、飲食店を起業(開業)した際のお金の注意点を見ていきましょう。
友人からの借入は自己資金として評価されない場合がある
前述しましたが、日本政策金融公庫などの金融機関から融資を受ける際は自己資金が必要です。
この時、両親や親戚から借りたお金については自己資金として評価されますが、友人や知人から借りたお金については自己資金として評価されない場合があるので注意しましょう。
必ずしも評価されないというわけではありませんが、難しいのが実情です。
借入の計算は慎重に行う
また、金融機関からの借入が大きなリスクであると考えすぎるあまり、起業してから必要となる運転資金について少なく計算してしまうことも注意が必要です。
せっかく起業できても、運転資金が足りなくなってしまっては、事業を継続していっくことができません。
金融機関などからお金を借り入れる場合は、金額について慎重に考えましょう。
飲食店の起業は、競争が激しいだけでなく、経済状況によっても大きく左右されます。
事業計画を立てる際は、じっくりと検討して堅実な内容の事業計画書を作ることが大切です。
※事業計画書の参考サイト:日本政策金融公庫
飲食店を起業(開業)する際に知っておきたいお金の知識まとめ
本記事では、飲食店を起業する際に知っておきたいお金の知識についてご紹介しました。
飲食業の起業は、方向性や規模などによって、かかる費用が大きく異なります。
お金がかかる項目を減らすことで、かかる費用も少なくすることができます。
資金調達の方法にも様々な種類がありますが、融資を受ける場合には事業計画書の内容も重要になるので、説得力のある事業計画書を用意しましょう。
また、助成金や補助金なども様々な種類があるので、常に最新情報をチェックして、積極的に活用することをおすすめします。