初めて飲食店を起業する場合には、小さな規模でスタートしようと考えている人も多いでしょう。
そこで、本記事では小さい飲食店を開業するメリットやデメリット、成功例や成功するためのポイントについて詳しく紹介していきます。
これまで培ってきた経験を活かして小さな飲食店を開業することを計画している方は、ぜひ参考にしてください。
小さい飲食店を開業(起業)するメリット
まずは、小さい飲食店を開業するメリットを見ていきましょう。
クレジットカード決済を導入しなくてもいい
大きな規模の飲食店を開業する場合には、お客様の要望に応えるために、クレジットカード決済を導入する必要がでてきます。
しかし、小さい規模の飲食店であれば、クレジットカード決済を導入しなくても、現金決済のみでスタートすることが可能です。
決済方法が現金だけなら、「売上はあるのに手元に現金がない」という事態に陥ることもありません。
実際に、規模の大きな飲食店では「黒字倒産」といった不可思議なことが起きてしまうこともあります。
小さな規模で現金決済のみの飲食店であれば、売上は常に手元にある状態なので管理もしやすく安心です。
資金繰りの苦労が少ない
小さい規模で飲食店を開業すると、資金繰りの苦労が少ないというメリットもあります。
飲食店の場合は、先に食材を受け取り、月末にまとめて代金を支払うという仕入れ方法がメインとなるため、支払日がくるまでは売上などの資金を手元に残しておくことができます。
資金面での不安があるという場合にも、小さい規模からスタートするのがおすすめです。
資格取得の問題
飲食店を開業するにあたっては、いろいろな資格が必要なのではないかと不安になる人も多くいます。
30人以上を収容できる規模の飲食店を開業する場合には、「食品衛生管理者」の他に「防火管理者」の資格も取得する必要があります。
しかし、小さい規模の飲食店であれば「食品衛生管理者」の資格のみで開業することが可能です。
収容人数の違いによって、必要な資格が変わってくることも覚えておきましょう。
自分の好きなように決断できる
大きな規模の飲食店を開業する場合には、スタッフなど関わる人の数も多くなります。
仲間と一緒に起業することもあるかもしれません。
関わる人数が多くなるということは、相談できるというメリットもありますが、自分だけの意見では決断できなくなるというデメリットも出てきます。
その点、小さい規模の飲食店を自分だけで開業する場合には、自分の好きなように物事を決定することが可能です。
自分の決断により失敗してしまったしても、全ては自己責任ということになります。
小さい飲食店を開業(起業)するデメリット
小さい飲食店を開業するのは多くのメリットがありますが、当然ながらデメリットもあります。
ここからは、小さい飲食店を開業するデメリットについて詳しく見ていきましょう。
メリットだけに目を向けず、デメリットもしっかりと知っておくことが成功に繋がります。
儲けが少ない
小さい規模の飲食店は、収容できる人数が限られているため、儲けが少ないというデメリットがあります。
運営が軌道に乗って、多くのお客さんが訪れるようになると、「もう少し大きな規模にすればよかった」と後悔する可能性もあります。
飲食店は、単価が低く、利益も売上の10%ほどに設定するのが一般的なので「薄利多売」のビジネスと言われています。
来店が少ない日が続く日もあれば、仕入れた食材が残って破棄しなくてはならないこともあります。
売り上げがなかなか安定しない可能性があることを覚えておきましょう。
意外と費用がかかる
初期費用や毎月の固定費をできるだけ少なくしたいという理由から、小さい規模の飲食店を開業する人もいます。
しかし、小さい規模でも意外とお金がかかってしまうことが多くあります。
もちろん、大きな規模の飲食店の方が初期費用や毎月の固定費も多くなりますが、収容人数が多ければ、その分多くの利益を出すことができるので、結果的に効率がいいという場合もあるのです。
実際、小さい規模の飲食店でも600〜800万円程度の費用がかかることが多々あります。
その多くが人件費ですが、最近では、安い時給ではなかなかいい人材が集まらなくなっているので注意が必要です。
なかなか休むことができない
小さい規模の飲食店には「なかなか休むことができない」というデメリットもあります。
小さい飲食店の多くは、少ないスタッフで切り盛りしていることが多いので、休みを取るのが難しいという問題を抱えているのです。
飲食店開業・起業は、「労働集約型」というビジネスモデルで行われます。
儲けは営業日数や営業時間に比例するため、頑張って仕事をすればもっと儲けることができますが、休めばその分売り上げも減ります。
頑張り次第で利益を増やすことができるのでやりがいを感じることができますが、その反面、休めば売り上げが減ってしまうという理由から休めなくなる人が多くいるのです。
飲食店起業には、想像しているよりも様々な苦労があります。
歳を重ねるごとに体力が追いつかなくなる可能性があることも考えておくべきでしょう。
小さい飲食店の成功例
小さい飲食店を開業して成功している人もたくさんいます。
これから小さい規模の飲食店を開業したいと考えているのであれば、小さい規模でも成功しているポイントをしっかりとチェックしておきましょう。
もちろん、ただ同じようにマネをするのではなく、そこからヒントを得て、自分のアイデアを膨らませていくことが大切です。
居酒屋経営(田中さん)
設備・外装・厨房などにどの程度の費用をかけるのかは、人によって大きく異なる部分と言えます。
田中さんは12坪の居酒屋の設備などに合計1030万円をかけて月商400万円の利益を出すことに成功しました。
内訳は下記の通りです。
- 物件取得費:260万円
- 居抜き譲渡代:180万円
- 内装工事:400万円
- 厨房機器:150万円
- 備品:40万円
田中さんは、開業するにあたって日本政策金融公庫の新創業融資を利用しました。
当初は、融資なしで起業しようと考えていましたが、自己資金だけではいい物件を選択できなかったため、融資を受けることを決断したのです。
やはり起業するのであれば、成功できる飲食店を作り上げるべきです。
融資を受けて予算を広げたことで、集客力のある物件を借りることができました。
多くのお客様が来てくれれば、それだけ早く借金を返済することもできます。
自己資金だけでの開業にこだわらず、融資を受ける決断をしたことがプラスになった成功例です。
たこ焼きダイニング(松本さん)
松本さん念願の脱サラをして、合計910万円をかけてたこ焼きダイニングを開業して成功しました。
- 物件取得費:340万円
- 居抜き譲渡代:380万円
- 内装工事:120万円
- 厨房機器:50万円
- 備品:20万円
物件探しにこだわっていたものの、自己資金が少なかったため、オープンするまでにかなり時間がかかってしまいました。
かなりの時間をかけた結果、納得のいく居抜き物件を見つけることができました。
設備投資できる資金が少なかったため、棚と看板を工夫することで費用を最小レベルにとどめ、予算内での開業に成功しました。
蕎麦居酒屋(夏木さん)
夏木さんは、仲間と一緒に蕎麦居酒屋を開業して成功しました。
蕎麦と居酒屋を融合したのは、ライバルに勝つためのアイデアです。
- 物件取得費:100万円
- 内装工事:70万円
- 厨房機器:120万円
- 備品:50万円
設備費用は合計340万円となっており、かなり安く開業することができました。
夏木さんは失敗のリスクも考えて、できる限り最小レベルの費用で抑えることに注力しました。
内装は自分でDIYすることで、業者に頼む工事費用を70万円に抑えることに成功しています。
和食居酒屋(真辺さん)
真辺さんは、和食居酒屋を開業して成功しています。
成功のポイントは、居抜き物件の内装工事を全て内装会社に任せずに、一部を自分でDIYしてコストを削減したことでした。
自分でDIYすることによって、コストを削減できるだけでなく、お店に対してより愛着がわくメリットもあります。
来店するお客様にも、手作りならではのあたたかさや居心地の良さを感じてもらえるでしょう。
自分自身でも手を加えることで、まさにオリジナルのお店が完成します。
真辺さんが成功したポイントは、内装の全てを自分でやろうとせずに、業者に任せる部分は任せて、自分のできる範囲で手を加えたという点です。
真辺さんは、本当に自分でもできるか確認するために、厨房内の壁を漆喰で塗ることからスタートしました。
厨房内の壁を漆喰で塗ってみて大丈夫と判断した上で、客席側の壁や天井を漆喰で塗りました。
カウンターの壁のクロスを貼るところまでは自分で行い、あとは業者に任せました。
全てを自分でやろうとしていたら、時間がかかって開業予定日には間に合わなかったでしょう。
特に、電気・ガス・水回りなどは安全性を重視する必要があるため、専門家に依頼する方が賢明です。
大衆食堂(平田さん)
平田さんは、ちょっとレトロな感じの大衆食堂を開業して成功しました。
平田さんが飲食店を開業する際に役立ったのがホームセンターでした。
ホームセンターが便利なのは、気軽に資材を仕入れることができ、塗るのも貼るのも簡単でわかりやすいものが多いこと、そして、軽トラックも借りることができて、大きなものでもスムーズに移動することができる点です。
更に、色を塗った時のサンプルなども提示されているため、イメージがわきやすいことがメリットです。
DIYが好きだった平田さんは、塗ったり貼ったりする作業は、楽しみながら自分自身で行いました。
ただし、トイレの改装や水回りは自分で作業するのはリスクがあると判断して業者に依頼しました。
さらに、ドア部分や鍵関係もセキュリティーを重視するためには、自分で作業するのは難易度が高いと判断しています。
また、お客様が利用する場所は、建て付けが悪いと評価が下がると考えました。
他にも、店の顔となる看板の設置も業者に依頼しています。
ちなみに、店の中がよく見える大きな窓を設置したことで「中がよく見えて入りやすい」とお客様から高く評価されました。
お客様目線に立って考えるというのも成功のポイントと言えるでしょう。
小さい飲食店を開業(起業)するには
ここまでは、小さい飲食店のメリットやデメリット、成功例を紹介してきました。
ここからは、小さい飲食店を開業するための資格取得や手続きについて見ていきましょう。
必要な資格と便利な資格
飲食店を開業するときに必ず必要な資格は「食品衛生責任者」です。
また、収容人数が30人以上になる場合には「防火管理者」という資格も必要になります。
食品衛生責任者
飲食店を開業して営業する場合、最低一人の「食品衛生責任者」を置く必要があります。
資格を取得するためには1日6時間程度の講習を受講します。
そして、飲食店を開業する際は「食品衛生責任者」が保健所に書類を提出しなければなりません。
防火管理者
収容人数が30人以上の飲食店を開業する場合には「防火管理者」の資格を取得する必要があります。
店の延床面積が300平米以上なら「甲種」、未満であれば「乙種」の資格が必要です。
消防署などで行われている講習会に参加することで、甲種は2日、乙種なら1日で資格を取得することが可能です。
深夜酒類提供飲食店営業届
「深夜酒類提供飲食店営業届」は、資格取得ではありませんが、深夜0時からアルコールを提供したいという場合に提出が必要となります。
店内の詳細図面や求積図などを用意するのは難易度が高いため、専門家に依頼するのがおすすめです。
調理師免許
飲食店を開業するには「調理師免許」が必要不可欠と思っている人が多くいますが、実際には必ず取得している必要はありません。
ただし、調理に関するさまざまな知識が学ぶことができるので、余裕があれば取得しておくといいでしょう。
営業許可証を取得する
飲食店を開業するためには、保健所の検査をクリアして営業許可証を取得する必要があります。
設備などに関する厳しい検査項目の必要条件を満たしていなければ、検査をパスすることはできません。
許可を得られなければ飲食店を開業することができないので、下記の項目をしっかりとチェックしておきましょう。
- 店舗スペースは営業専用か
- 床・壁の素材は清掃しやすいか
- 調理場とホールに換気扇(シャッター付き)はあるか
- ネズミやゴキブリの対策は取られているか
- 更衣室があるか
- トイレは衛生上の問題がないか
- 手洗い設備が整っているか
- 食器や食品を清潔に保管できる環境か
- フタ付きゴミ箱は設置されているか
- 天井は不燃材であるか
- 100ルクス以上の明るさがあるか など
必ずチェックされるポイントがあるので、事前にチェックして検査に備えるようにしましょう。
税務署や地方自治体に申請書類を提出
税務署や地方自治体に申請書類を提出する必要があります。
- 個人事業の開廃業等届出書
- 青色申告承認申請書
- 都道府県税務署
市町村役場に提出する書類もチェックしておきましょう。
- 個人事業開始申告書
- 事業開始申告書
- 事業開始報告書
- 個人事務所開始申請書 など
小さい飲食店を開業(起業)して成功するには
ここからは、小さい飲食店を開業して成功するためのポイントをチェックしていきましょう。
小さい規模だとしても、開業するからには成功させたいでしょう。
まだ若いから一回ぐらい失敗しても…といった甘えは禁物です。
コンセプトを明確にして見合った立地を選ぶ
小さい飲食店開業の成功のポイントは、飲食店のコンセプトをしっかり決めて、それに見合った立地を選ぶことです。
「とにかく今流行りのメニューを提供したい」という考えであれば、それでもいいでしょう。
もし流行りのメニューを出したいと考えるのであれば、流行に敏感な人達が集まる場所を選ぶ必要があります。
資金力や実行力があれば、流行に乗って事業も軌道に乗せることができるかもしれませんが、一過性の流行は衰退するのも早いので注意が必要です。
準備を進めている間に流行が終わっていたということにならないように、計画を進めていきましょう。
コンセプトを明確にすることで、そのコンセプトに合う立地も必然的に見えてくるものです。
しっかりとリサーチを行い、コンセプトに合う立地を選ぶようにしましょう。
柔軟な考え方を持つ
流行といえば、東京が発信源といっても過言ではないでしょう。
ライバルも多いため、小さな飲食店で勝負するのは難しいかもしれません。
しかし、東京以外の立地であれば、まだまだ可能性は十分にあります。
地方というものは、東京と比較すると流行も少し後手です。
ライバルも少ないので、小さな飲食店でも十分に勝負することができます。
コンセプトを考える際はもちろん、立地を選ぶ際にも、「こうでなくてはならない」「ここでなくてはならない」と頑なに考えすぎず、柔軟な考え方を持つことが大切です。
アイデアを加えてオリジナルにする
人気があるからという理由だけで、コンセプトとしてすぐに取り入れてしまうのは危険です。
これだというコンセプトを見つけたら、そのコンセプトに自分らしいアイデアを加えて、オリジナルのものにしていく必要があります。
人気がある理由やターゲット層などを細かくリサーチしたうえで、さらに自分のアイデアも考えてみましょう。
これとは逆に、自分のアイデアだけでは不十分だと感じた場合には、最近の流行や人気があるものをリサーチすることでヒントを得られる可能性があります。
成功例や人気があるものをそのままマネするのではなく、そこに自分らしさを加えて、オリジナルのものを完成させることが成功への近道と言えます。
小さい飲食店の開業(起業)まとめ
本記事では、小さい飲食店を開業するメリットやデメリット、成功例や成功するためのポイントについて紹介してきました。
小さい飲食店を開業すると次のようなメリットがあります。
- 現金決済のみでお金の管理がしやすい
- 資金繰りの苦労が少ない
- 必要な資格が少ない など
一方で、次のようなデメリットもあります。
- 利益が少ない
- 費用意外とがかかる
- なかなか休めない など
メリットだけでなくデメリットもしっかりとチェックしておくことで、失敗のリスクを減らすことができます。
実際に多くの人が小さい飲食店を開業して成功しています。
すでに成功している飲食店や人気のある飲食店をただマネするのではなく、自分らしいアイデアを加えてオリジナルにすることで、成功する確率は高まります。
これから小さい飲食店を開業したいと考えている場合には、たくさんの成功例や成功のポイントをチェックして、起業を成功させましょう。