「飲食店を起業したい!」と考えている人は、様々な方法で情報を集めていることでしょう。
飲食店を起業するためには、必要な準備がたくさんありますが、本記事では飲食店の起業に必要な資格に絞って紹介していきます。
必要な資格や持っていると便利な資格と併せて、運営に必要な保健所での許可や注意点についてもしっかりとチェックしておきましょう。
飲食店を起業(開業)する際に資格が必要な理由
まずは、飲食店を起業する際に資格が必要な理由を説明していきます。
安心感を与え、知識や技術のレベルを証明できる
飲食店の営業許可を取得する際に必要な資格というものはありません。
しかし、飲食業に関わる資格を取得していることでお客様に安心感を与えることができるというメリットがあります。
また、専門的なジャンルの飲食店を経営する場合には、それに合わせた資格を取得しておくことで、専門的な知識や技術を持っていることを証明することもできます。
飲食店を起業したいと考えているのであれば、必要な資格を前もって計画的に取得しておくのがおすすめです。
調理師免許のメリット
飲食店と聞くと「調理師免許が必要」とイメージする人もいるかもしれません。
しかし実際には、飲食店を起業する際に必ずしも調理師免許が必要というわけではありません。
飲食店のキッチンで、スタッフとして働く場合でも、ふぐの調理など特別な作業をしない限りは資格取得は必須ではありません。
ただし、調理師免許を持っていることで、新しく飲食店を開業する際に必要な「食品衛生責任者」の資格を、講習会を受講することなく申請だけで取得することができるというメリットがあります。
調理師は国家試験を受けて取得できる資格の1つで、調理師学校で勉強するか、飲食店で実務経験を積みながら学ぶという選択肢があります。
試験はマークシート式で、合格率は全国平均60%程度となっています。
平成28年時点で全国には約380万人の調理師がいると言われています。
調理師免許を取得することで、調理に関する知識と技術を持っていることが証明できるだけでなく、飲食店業界に就職・転職する際も有利になる可能性があります。
飲食店を起業(開業)する際に必要な資格
前章で、営業許可を取得する際に必要な資格はないとお伝えしましたが、実際に営業をスタートする時点では、必ず取得しておかなければならない資格があります。
営業をスタートする段階で取得しておく必要がある資格は「食品衛生責任者」と「防火管理者」です。
食品衛生責任者とは
食品衛生責任者は、各都道府県の食品衛生協会が開催している公衆衛生学や食品衛生学など6時間の講習を受講して取得できる資格で、受講費は1万円程度です。
例えば、神奈川県で資格取得をして、東京都内で飲食店起業というのも問題はありません。
保健所に店舗の営業許可申請を出す際には、交付された食品衛生責任者手帳などを提示する必要があります。
飲食店起業する人たちは、開業する3カ月くらい前には意識して取得しておくようにしょう。
いざ、予約を取ろうと思ったら、1~2カ月先まで予約が一杯…ということもあり得るので注意が必要です。
食品衛生責任者は、飲食店舗を営業する場合に必要となる「国家資格」なので、民間資格と比較すると信用度が格段に違います。
食品衛生管理者や食品衛生監視員と言った似たような名前の資格取得もありますので区別しましょう。
食品衛生責任者は、飲食店を起業して、食品の製造・販売に関わる場合に必要不可欠な資格です。
各自治体によって規定に違いがありますが、どれだけ小さい飲食店でも、1店舗に1人の食品衛生責任者を配置することが義務化されています。
食品衛生責任者は、設備の衛生確認をしたり、不衛生な場所があれば改善をする役割を担っています。
また従業員に対して、健康管理までしっかりチェックして、体調が悪いスタッフは無理して働かせないという対応まで要求されます。
また、手洗いや清掃のチェック表など衛生管理表の作成、保管場所や加熱方法のチェックなど食材の管理も欠かせない仕事の1つです。
資格を持っているということは、正しい知識を持っているという証明になります。
資格取得者が、飲食店の衛生をしっかり管理することが要求されているのです。
食品衛生管理者とは
食品衛生責任者と似た資格として「食品衛生管理者」という資格もあります。
食品衛生管理者は、食肉や乳、魚と言った製造や加工の過程で衛生上考慮が必要な食品を製造する工場で必要とされる資格です。
食品衛生管理者は食品衛生責任者になることができますが、その逆は成立しません。
食品衛生責任者よりも専門的な資格と言えます。
最近、弁当屋をオープンする人も増えていますが、弁当・菓子・飲料の製造工場に対しては、食品衛生管理者の資格取得は必要なしとされています。
防火管理者とは
「防火管理者」も飲食店を起業する際に必要な資格です。
収容人数が30名以上の飲食店を起業する場合には「防火管理者」の設置が必要となります。
また、店舗の大きさによって取得しなければならない資格の分類が変わります。
防火管理者とは、人たちが集まるスペース空間で火事を発生させないために、消防計画を作成したり防火管理上で必要な業務を行ったりする責任者のことです。
防火管理講習は、都道府県知事、市町村の消防庁、日本防火・防災協会が開催しています。
300平米未満の場合は「乙種防火管理者」もしくは「甲種防火管理者」が必要となり、それぞれ講習内容も異なります。
番外編:飲食店を起業(開業)した後に持っておいたら便利な資格
専門的なジャンルの飲食店を起業する場合には、その分野に関わる専門的な資格を取得しておくのがおすすめです。
ここでは、先に紹介した「調理師」以外の資格を紹介していきます。
ソムリエ
最初におすすめしたい資格は「ソムリエ」です。
ソムリエとは、レストランなどでお客様のリクエストに従い、お客様の好みや希望に合うワインを提供できる資格です。
国家資格ではありませんが、ワインに関する知識を持っていることを証明することができます。
「にほんソムリエ協会」と「全日本ソムリエ連盟」の2つの団体がソムリエの資格試験を実施しています。
日本ソムリエ協会での資格取得は、20歳以上て通算3年以上のアルコール飲料に関しての業務に従事している必要があります。
全日本ソムリエ連盟の場合は、アルコール飲料関係の従事経験は必要なく、20歳以上であれば受験することが可能です。
ワインエキスパート
「ワインエキスパート」という資格は、日本ソムリエ協会が開催している資格で、ソムリエ資格試験の実技を省略したものとなっています。
ワインエキスパートの場合は、アルコール飲料関係の仕事に就いている必要はありません。
ソムリエに比べると若干合格率が高い資格となっています。
ビアテイスター
次のおすすめ資格は「ビアテイスター」です。
ビールの味わい方・味・クオリティー・スタイルについて評価するビアテイスターに認定される資格となっています。
唎酒師(ききざけし)
次のおすすめ資格は「唎酒師」(ききざけし)です。
日本酒に対しての専門的な知識を持っていることを証明できる資格となっており、お客様に対して食事に合わせた日本酒などを提供できるようになります。
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)が開催する3つのプログラムのうちどれか1つを受講することで資格を取得することができます。
焼酎唎酒師・焼酎アドバイザー
次のおすすめ資格は、「焼酎唎酒師・焼酎アドバイザー」です。
焼酎唎酒師・焼酎アドバイザーは、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)が運営している資格で、お客様に対して、焼酎の楽しみ方を提案することができるようになります。
3つのプログラムのうちどれか1つを受講すれば、資格を取得することが可能です。
栄養士・管理栄養士
次のおすすめ資格は「栄養士・管理栄養士」です。
栄養士・管理栄養士は、健康を食事と栄養面からサポートするプロとして認定してくれる資格です。
食事や栄養面でのアドバイスをしたり、献立をたてたり、栄養状態を管理する知識を深めることができます。
栄養士資格を取得するには、大学・短大・専門学校などの栄養士養成施設を卒業する必要があります。
管理栄養士は、栄養士養成施設を卒業した上で国家試験に合格する必要があります。
お客様に対して健康面を意識した飲食店であるというイメージを与えることができ、実際に栄養の行き届いたメニューをお客様に提供することができます。
製菓衛生師
次のおすすめ資格は「製菓衛生師」です。
製菓衛生師は、お菓子のプロフェッショナルとして認定してもらうことができる国家資格です。
○○製菓専門学校などの製菓衛生師養成施設を卒業して、製菓衛生師試験に合格する必要があります。
菓子製造業に2年以上従事した後、製菓衛生師試験を受けて資格を取得するという選択肢もあります。
安全なお菓子を提供している証明として有効な資格です。
パン製造技能士
次のおすすめ資格取得は「パン製造技能士」です。
パン製造技能士は、パンの種類・栄養・生地の発酵など、パンを作る上で必要な知識と技術を持っていることを証明できる国家資格です。
取得するためには、学科試験と実技試験の両方に合格する必要があります。
惣菜管理士
惣菜管理士は、一般社団法人日本惣菜協会が運営している資格です。
総菜管理士の資格取得によって、食材製造や衛生面の管理がしっかり行き届いた飲食店であるということを証明できます。
フードコーディネーター
次のおすすめ資格は「フードコーディネーター」です。
フードコーディネーターには、企業のレシピを作成したり、料理番組に出演したり、企業のアドバイザーになるなど様々な「食のスペシャリスト」がいます。
フードコーディネーターの資格を取得することによって、ベストレシピの作成や開発、食に対する様々なアイデアを膨らませることができるようになります。
飲食店を開業する際には保健所の許可も必要!
飲食店を開業する際には「保健所」の許可も必要となります。
飲食店を開業する前は、所在地を管轄する保健所へ「食品営業許可申請」の提出が必要です。
食品営業許可の方が需要が高い
飲食店を起業する際は、「飲食店営業」と「喫茶店営業」の選択肢があります。
カフェを開業する場合には、「喫茶店営業」を選択すればいいという認識を持つかもしれません。
しかし、「喫茶店営業」は、酒類以外の飲物または茶菓をお客様に飲食させる営業が対象となっているため、アルコールや調理が必要な飲食は出すことができなくなります。
カフェでもアルコールや食事を提供する場合には、「飲食店営業」を取得する必要があります。
このように、2つの選択肢がありますが、食品営業許可の方が需要が高いというのが実情です。
事前に相談するのがおすすめ
食品営業許可の資格取得には、下記のような条件があります。
- 食品衛生責任者を店に1人以上置くこと
- 都道府県ごとに定められた基準に合致した施設で営業をすること
飲食店営業許可のポイントは、清潔なお店であり、かつ衛生的であることです。
流しの数・手洗いの配置・床や壁の材質・客席の明るさなどに対して厳しいチェックがあるので、安易な気持では許可を得ることはできません。
設計に問題ありと指摘されて、取り返しの付かないことになってしまう場合もあります。
審査を通過するためには、事前に保健所に相談に行くのがおすすめです。
店舗の図面を持って「このような飲食店起業をしたいのですが…」と保健所に相談してみましょう。
申請に必要なもの
許可の条件などはそれぞれ保健所によって若干異なります。
「居抜き」で飲食店を起業する場合でも、新しく営業許可の取得が必要です。
申請に必要なものは下記の通りです。
- 店舗の図面→特に調理場の部分は詳しく記載する
- お店付近の案内図→住宅地図をコピーしたものでもOK
- 保健所の申請書2通
- 水質検査票(水道が直結でない場合のみ)※たいていは大家さんが管理しているので聞いてみましょう。
- 食品衛生管理者の手帳または調理師免許
工事完成の1週間くらい前、または開店予定の10日くらい前には申請手続きを完了させてください。
検査までの流れ
検査までの流れは次の通りです。
- 書類のチェックを受ける
- 手数料を納入
- 調査のスケジュールを決定
- 店舗の調査(実際に保健所の人が来る)
ポイントは、店舗の設備が食品衛生法で定める基準を満たしているかという点です。
検査にパスすれば、晴れて飲食店を開業することができます。
しかし、検査にパスできなかった場合は、改善しなければオープンすることができません。
開業計画が大きく狂ってしまう可能性もあるので、1度の検査でしっかりとパスできるように、事前にしっかりと準備をした上で検査に挑む必要があります。
飲食店起業(開業)に向けて資格取得や届け出を出す際の注意点
ここからは、飲食店起業に向けての注意点を見ていきましょう。
調理経験や資格と経営経験はイコールではない
調理経験や飲食関係の資格がある場合は、自分の得意分野で業態を広げていくことができます。
今までの調理経験やスキルを活かしてステップアップしていくことも可能です。
しかし、調理経験や資格はあっても、起業するのが初めてであれば経営経験はゼロに等しいでしょう。
むしろ、調理経験がある人たちほど、独立して飲食店を経営していくことに不安を感じている人も少なくありません。
飲食店を開業するということは、調理だけではなく、接客スタッフの育成やお金の管理もしていく必要があります。
スタッフが何人もいる場合には、シフト管理にも時間を要します。
また、接客マニュアルなども準備する必要が出てきます。
さらに、資金繰りや新しいメニューの開発、商品の棚卸しや原材料費などのコントロール、顧客を獲得するための販売促進もしていく必要があります。
飲食店を起業して運営していくためには、調理のことだけでなく、運営に関する様々なことも考えていかなければなりません。
実際に、飲食店を開業するために、経営スクールなどに参加して勉強する人たちもたくさんいます。
「調理経験や資格があるから大丈夫」と考えてしまわずに、起業する前に経営に関する勉強もしっかりとしておくことが大切です。
調理経験がない場合は他の選択肢を考える
調理経験がない状態で飲食店を開業したいと考えている場合には、経営のノウハウに加えて、調理の勉強もしていく必要があります。
事前に調理の勉強をしておく
「いつか飲食店を開業したい」と考えているのであれば、できるだけ早い段階からアルバイトなどで調理を経験しておくのがおすすめです。
自宅で料理をするのが得意という場合でも、実際にお客様が満足できる食事を提供するというのは、簡単なことではありません。
調理経験者を雇う
ただし、自分自身に調理の経験がなくても、調理経験者を雇うことで飲食店を開業することも可能です。
自分1人で起業するよりも人件費はかかってしまいますが、その分、自分が調理の勉強する時間を短縮することができます。
スタッフを雇う場合には、コミュニケーション能力も必要不可欠です。
飲食店はサービス業なので、お客様と上手にやり取りするためにも、コミュニケーションは必須と言えます。
調理技術のいらないメニューを開発する
もうひとつの選択肢は、「料理経験者なしで起業する」という選択肢です。
調理技術のいらないメニューを開発すればいいのです。
実際に調理技術がいらないメニューを提供しているお店では、材料の分量や調理の手順が細かく記された書類(基準表)を作成して、それに従って作業をしています。
そもそも基準表を作ること自体難しい…と感じてしまうかもしれませんが、一度、作ってしまえばあとは基準表に従うだけです。
知り合いにレベルの高い調理人がいたら、頼んでみるというのも1つの方法です。
また、専門のコンサルティング会社に依頼するという方法もあります。
調理経験がない場合には、様々な選択肢の中から自分に合うものを見つけて起業を目指しましょう。
届け出に必要な日数や書類を確認しておく
飲食店を開業するためには、様々な手続きが必要となります。
特に前章で紹介した「保健所」での手続きには、必要な書類もたくさんあります。
また、検査や手続きにはある程度の日数がかかることも把握しておく必要があります。
飲食店の起業を目指す場合には、計画段階で下記のようなポイントをしっかりとチェックしておきましょう。
- どんな書類が必要なのか
- どれぐらいの日数がかかるのか
- どれぐらいの費用が必要か
飲食店起業(開業)の資格と届け出まとめ
本記事では、飲食店を起業する際の資格にスポットを当てて、必要な資格や持っておくと便利な資格、開業時に必要な保健所の許可や注意点を紹介してきました。
飲食店の営業許可をもらうために必須の資格はありませんが、実際に営業をスタートするためには「食品衛生責任者」と「防火責任者」の資格が必須となります。
必要な書類や検査にかかる日数をしっかりと把握した上で申請する必要があります。
また、専門的なジャンルの飲食店を開業する場合には、各分野に特化した下記のような資格もおすすめです。
- ソムリエ
- ワインエキスパート
- ビアテイスター
- 唎酒師
- 焼酎唎酒師・焼酎アドバイザー
- 栄養士・管理栄養士
- 製菓衛生師
- パン製造技能士
- 惣菜管理士
- フードコーディネーター
資格を取得していることで、専門的な知識や技術を持っていることを証明することができます。
また、お客様に対して安心感を与えることも可能です。
「飲食店を起業したい」と考えているのであれば、どんな資格があれば有利なのかということもしっかりと考えて、できるだけ早い段階から準備を進めていきましょう。