飲食業界に長く携わってきた人の中には「そろそろ独立して自分の店を持ちたい」と考えている人もいるかもしれません。
しかし、料理に関する経験やスキルは十分備わっていても、飲食店を開業するとなると、料理の腕だけでは不十分です。
本記事では、飲食店を開業するために必要な知識や開業までの流れ、開業に必要な資格やかかる資金などを詳しくご紹介します。
飲食店を開業するに至るまでに必要な全知識を集約していますので、ぜひ参考にしてください!
飲食店を開業(起業)する際に必要な基礎知識
まずは、飲食店を開業する際に必要な基礎知識をチェックしていきましょう。
QCDの確立
飲食店を開業するために必要な基礎知識の1つ目は、これまで培ってきた経験やスキルを活かして美味しい料理を提供することです。
これを、モノづくり(製造業)の世界では「QCDの確立」といいます。
QCD(品 質 、コス ト、数量 ・納 期)という概念は 、日本 の製 造業 で1960年代後半から次第に普及 し現 在で は広く定 着 して いるが、経営学を始めとする学問の世界では、まだ市民権を得ていないように思われる。
<中略>
経営学の出発点とされ る「科学的管理法」の延長線上に位置づけられ、Q(高品質)、C(低原価)、D(適時納期)の3っが主要な課題とされている)。
引用:QCD概念の意義の再検討
この考え方は、飲食業界にも共通する考え方と言えるでしょう。
- Quality(品質):美味しいこと
- Cost(コスト):お値ごろ価格
- Delivery(デリバリー):いいタイミングでの料理の提供
この「QCD」を実現するために必要な知識を揃えていくことが一番重要です。
メモを残す
「QCD」を実現するためにも、まずは必ずノートとペンを準備しましょう。
アナログなノートとペンでなくても、iPadなどの電子ツールでもかまいません。
とにかく、いつでもメモを残せる環境を整えることが大切です。
仕事中や日常生活の中で、気になったことやひらめいたことをどんどんメモしていきましょう。
時間がある時には、過去を振り返って思い出せる限りメモに残してください。
このちょっとしたメモが、開業を成功させるヒントになります。
アイデアは思いがけない時にひらめくものです。
パッとひらめいた時にいつでもメモできるように、日頃から習慣にしておきましょう。
経営やお金の知識を学ぶ
長い間、飲食業界に携わってきた人は、自分の腕やスキルに自信があります。
長年培ってきた経験やスキルを活かして独立しようと考える人も多いでしょう。
しかし、独立を目指す時に見落としがちなのが経営やお金の知識を学ぶということです。
実際に料理を作ってお客様に提供するスキルと、お店を自分で経営していくことは、必要な知識もノウハウも全く違うものです。
どちらか1つだけでは、飲食店を開業することはできても、成功させることは難しいでしょう。
開業を目指しているのであれば、早い段階から経営やお金に関する知識を学んでおくことが大切です。
飲食店を開業(起業)するまでの流れ
飲食店を開業するまでの流れもきちんと把握しておきましょう。
流れを知っておくことで、何が必要か、どう行動するべきかを的確に判断することができます。
ここでは順を追って説明していきますので、抜け落ちないようにリスト化してチェックするのがおすすめです。
必要だと思ったことを手当り次第にこなしていくのではなく、きちんと順番にこなしていくことが成功につながります。
様々なハードルや壁もありますが、諦めずに1つずつ順番に進めていきましょう。
- 開業するお店に必要な資格の洗い出し
- 届け出の種類を確認
- マスタースケジュールの作成
- 事業計画書の作成
- 投資計画
- 売上計画
- 物件探し
- 資金調達
- 厨房機材買付
- 内装工事
- 店内備品買付
- 従業員求人・雇用と教育
- 宣伝・広告
- 顧客バンクのシステム作成
以上の項目を1つずつ着実にこなしていきましょう。
進めていく中で、いくつもの疑問やトラブルが発生するはずです。
疑問やトラブルが発生した場合には、うやむやにしたまま進めずに、きちんと1つずつ問題を解決してから次に進むようにしましょう。
また、1度踏み出したら戻らないという覚悟をもって始めることも大切なポイントです。
飲食店を開業(起業)に必要な資格
ここからは、開業する時に必要な資格をご紹介します。
飲食店起業と聞くと、調理師免許が必要だと思う人が多くいますが、実は調理師免許は飲食店起業に必ず必要な資格ではないのです。
食品衛生責任者
「食品衛生責任者」は、飲食店などの営業許可を受ける店舗に1名以上置くことが義務付けられています。
食品衛生責任者の役割は、施設において食中毒や食品衛生法違反を起こさないように、食品衛生上の管理運営を行うことです。そのため、保健所が実施する講習会などを定期的に受講しましょう。
飲食店を訪れると、レジの近くの壁などに「修了証」が掲示されているのを見かけるはずです。
講習を受けることで取得することが可能で、受講費用は10,000円前後となっています。
ただし、調理師免許や栄養士免許などの資格を取得している場合は、講習を受ける必要はありません。
防火管理者
「防火管理者」は、30人以上を収容できる飲食店に1名以上置くことが義務付けられています。
防火管理者は消防法に定める国家資格であり、その資格を有する者のうち防火対象物において防火上必要な業務を適切に遂行でき、従業員を管理・監督・統括できる地位にある者で、防火対象物の管理権原者から選任されて、その防火対象物の防火上の管理・予防・消防活動を行なう者を言う。
引用:Wikipedia
延床面積によって必要な資格の内容が異なるので注意が必要です。
- 延床面積300平米以上:甲種防火管理者
- 延床面積300平米未満:乙種防火管理者もしくは甲種防火管理者
ただし、開業する場所や地域、市や県などの条例も関係してくるので、事前に調べておきましょう。
講習を受けることで取得が可能で、合格率はほぼ100%と言われています。
飲食店の開業(起業)にかかる資金
飲食店の起業を目指している場合、開業にかかる資金も大きな問題となります。
開業にかかる資金は、店舗の大きさや飲食店のジャンルによっても大きく異なるので、一概に「いくらかかります」ということはできません。
例えば、月の賃料が20万円前後の店舗を借りる場合は、開業する場所によっても差はありますが500万円~1300万円ぐらいの資金が必要になるでしょう。
ただし、これはあくまで概算なので、大きな店舗でもアイデアや工夫次第で経費を抑えることは可能です。
逆に、内装や設備にこだわりすぎると小さな店舗でも多くの費用がかかってしまいます。
初めて飲食店を起業する場合には、できる限り費用や借入を少なくして、資金を運営に回すように心掛けるのがおすすめです。
飲食店を開業(起業)する前にしておくべきこと
ここからは、飲食店を開業する前にしておくべきことをお話していきます。
まず、何よりも必要なのは「覚悟を決めること」です。
これは成功するためにとても大切といえます。
チェックすべきポイント
さらに、飲食店を開業する前には下記についてもチェックしておきましょう。
- 看板メニューは何にするのか
- どんなお客さんに来てもらいたいか
- 誰かとやるのか
- どこでやるのか
世の中でよく言われる5W2Hに当てはめて考えてみましょう。
開業する前に何か問題が起きた場合にも、この考え方は非常に役に立ちます。
5W2Hの考え方を当てはめる
事業計画書(創業計画書)を作る場合にも5W2Hの考え方が役立ちます。
経営者としての必要な考え方(思考回路)もチェックしておきましょう。
- いつ(When)
- どこで(Where)
- 誰が(Who)
- 何を(What)
- なぜ(Why)
- どうする(How)
- いくら(How Match)
開業を目指している飲食店の事業計画書を作る際は、この考え方に当てはめて考えてみましょう。
PDCAサイクル
さらに「PDCAサイクル」についても知っておきましょう。
PDCAサイクルは、生産技術における品質管理などの継続的改善手法。Plan→ Do→ Check→ Actの 4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する。PDCAサイクルは、主に日本で使われ、Aのみが名詞のActionといわれる。
引用:Wikipedia
- Plan(計画)
- Do(実行)
- Check(評価)
- Action(改善)
この4つの段階を繰り返しながら、準備を進めていきましょう。
これは、製造の中で行われている生産技術の業務の中で品質管理を継続して改善するための手法ですが、製造と飲食店は非常に似ているので当てはめて考えることができます。
様々なシミュレーションをする
また、開業する前にはシミュレーションをしてみることも大切です。
飲食店業界での経験があれば、様々な状況をイメージするのも容易いでしょう。
いろいろなパターンの状況をイメージすることで、事業計画書や資金調達の内容も変わってくるはずです。
これまでの経験を掘り起こして、いい状況だけでなく悪い状況やトラブルについても考えておきましょう。
開業前にしっかりとシミュレーションしておくことで、実際に営業を開始したあとに問題やトラブルが発生しても、冷静に対応することが可能となります。
幅広い視野を持つ
開業する前からこだわりすぎてしまうのは少し注意が必要です。
例えば、資金に見合わない設備投資をしてしまうと、実際に営業をスタートしたあとに苦しい状況に陥る可能性があります。
店舗の立地や内装にこだわりすぎると、なかなか物件が見つからないという状況にも陥りかねません。
開業前には、できるだけ幅広い視野を持ち、柔軟に物事を考えるようにしましょう。
1人で考えすぎてしまわずに、周りに相談したり意見を参考にするのもおすすめです。
飲食店を起業(開業)した後にするべきこと
最後に、飲食店を起業した後にすべきことも見ておきましょう。
大切なのは、開業前から取ってきたメモを継続すること。
そして、いつでも5W2Hの考え方に当てはめて考えること。
例えば、
- メニューの商品をABC分析して、いくらかかったか?【How Match】
- 時間はどれくらいかかるか【How】
といった感じで考えることが大切です。
また、飲食店を開業した後は、収支をしっかりと管理することも必要です。
収入と支出のバランスがどうなっているのか、自分のお店の操業状態をしっかり把握しておきましょう。
そして、飲食店の売り上げには、世の中の流れも大きく関係します。
「今年は悪天候が多くて野菜が高かった」といったことも、メモにしっかりと書き込むことも継続しましょう。
飲食店の起業(開業)の知識まとめ
本記事では、飲食店を起業する際の基礎知識や開業までの流れ、開業に必要な資格や必要な資金について紹介してきました。
開業を目指すのであれば、まずは日頃からメモを取る習慣をつけましょう。
メモの方法はデジタルでもアナログでもいいので、気になることやアイデアなどをどんどんメモに残すことが大切です。
そして、開業の流れをリスト化して、順番通りに1つ1つこなしていくことも重要になります。
かかる資金は店舗の立地やジャンルによっても異なりますが、最初から資金をかけすぎず、できるだけ工夫して少なく抑えることが大切です。
開業前にしておくべきことと開業後にすべきことをチェックした上で、着実に開業準備を進めていきましょう。